August 01, 2010

日本海呼称問題

なにか新しいことや、気の利いたことを言おうというのではなくて、こういう問題が議論されているの知ってる?ってだけの話です。

日本海呼称問題。

当然だと思われている「日本海」という海の名前、これを「東海」と呼ぶべきだという韓国の訴えがあるんです。韓国は1992年頃から国際社会にこの主張を問い始め、実際に各国の政府や地図出版社に働きかけを行ってます。なんでも、韓国側の主張によれば、「東海」という呼称は2000年前から使用されており、「日本海」という呼称は帝国主義時代の日本がその国力によって無理矢理強制した呼称であるから、「東海」に戻すべきだとのこと。

こういう話って愛国心を駆り立てるものなので、世界各地の公の場に掲示されている地図で「日本海」「Sea of Japan」と表記されていると、何者かが「東海」「East Sea」と上書きしていくという事件も報告されている。たぶん、そこを訪問した韓国人がやっているのだろうというのは容易に想像されますけどね。

で、実際に、「日本海」を「東海」と表記する地図が徐々に増えている。あるいは「日本海(東海)」とか「日本海・東海」といった表記も出てきている。

他方、日本政府側は世界中の主要な図書館の古地図や古文書を調べて、韓国側の主張に根拠がないことを訴えている。それによると、「日本海」という呼称が概ね定着したのは17世紀、18世紀とか、そのくらいらしい。っていうか、まともな古地図が世に登場したのがその頃、っていう気もするけどね。で、その前は特に決まった名前がなく、海に名前が書かれてない場合も多いみたい。しかし、古文書や古地図にあの朝鮮半島と日本列島の間の海に名前が表記されている場合は、ほぼ「日本海」。古くは「東洋海」(Oriental Sea)や「朝鮮海」(Sea of Korea)という表記もあったらしいけど、日本政府の調査によれば、どの時代にあっても「日本海」とする文献が大多数で、その他の呼称が使われている事例はわずか。ましてや「東海」という呼称はその中でもさらに稀な例で、事実上ほとんど使われたことがない呼称らしいです。

韓国側が「日本海」の呼称を嫌う感情も分かる気はする。帝国主義の日本に痛めつけられ、最後には併合され、民族の誇りを蹂躙された歴史がある。しかも、「恨」(ハン)を美徳とする国民性。その韓国の東に横たわる海が「日本海」というのは、たとえ戦後65年経ったとはいえ、心穏やかではいられない。わずかでも「東海」と呼ばれた事実があるのであれば、やはりこの海は「日本海」ではなくて「東海」であった、「日本海」という呼称は日本軍国主義の名残だと主張もしたくなるでしょう。

この日本海呼称問題、問題が他の領土問題と比べて様相が異なる点があります。当たり前ですが、日本、韓国、双方とも領有権を主張しているわけではない。日本海は国際法上の公海、どの国にも所属しない海なんですよね。公海の呼び名を争うという事例は他に例がない。

世界各国、領土問題を抱えている国はいくらでもあって、各国は領土問題を解決することはできていないけど、領土問題がどういう問題で、どういう風に扱うべきかということには、それなりに慣れている。「ああ、2カ国、3カ国が領有権を争ってるのね、歴史的経緯はどうだったのかな。民族的、文化的帰属はどっちにあるのかな。でも、A国の主張を認めたら、我が国が抱えている別の領土問題での主張と矛盾するな。B国は我が国の友好国だし、ここで主張を認めておけば恩が売れるかな。云々。」って感じで外交ゲームが日々行われているけど、公海の名前を争うっていうのは例がない。

例えて言えば、パキスタンがインド洋を「インド洋」と呼ぶのはけしからん、あそこは「南海洋」である、と主張するのと同じ状況なわけです。日本側は、一国の国内的事情で公海の名前を変えさせようとする挑戦が認められるとすれば、そういうことも起こりうる、として国際社会に訴えている。また、国際海洋交通、国際航空交通上の混乱も無視できないとも訴えている。

しかし、各国の地図出版社や放送局などの中には、韓国の主張に「そうなのかなぁ」と納得して「東海」の表記を載せるところが若干づつだけれども増えているらしい。


別に私は嫌韓でもないし、隣国同士で仲良くやっていけばいいじゃん、って思ってますけど、両国間には竹島問題や歴史教科書問題に加えて、こういう問題もあるんですよね、っていう話です。

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